人間万有引力

“全ての物質が地球の重力に引っ張られている”
恐らく人と人も引き付けあっていると感じる。

人と人がぶつかる。
それは宇宙空間における隕石の衝突や細胞というミクロの世界における衝突、あるいは雨雲の中で電子と電子がぶつかり合っているというう現象と同一のものである。

例えば、人気のない住宅街を歩いている。前も後ろも他に歩行者はいない。ところが、ふいに横の路地や、交差点の角から別の歩行者や自転車に乗った者、原付バイクが現れる。
この時、私はいつも「なぜちょうどこのタイミングで他者が現れるのか?」と思う。そのタイミングとは、ほぼぶつかりそうなタイミングで現れるからだ。

別の例として、自動車を運転中、ふとコンビニに入ろうとウィンカーを出し左折しようとしたそのタイミングで、コンビニ駐車場の出入り口とおなる歩道を歩行者、自転車が通る。左右を見ても、ほかの歩行者はいない。つまり、これだけの距離がありながら、なぜ自動車が左折するところに歩行者がいるのか?逆を言えば、歩道を歩いていて、たまたま車道からの出入り口に差し掛かると車が現れるのはなぜなのか?

もうひとつ例を出す。これも交通における疑問だが、すれ違うのもやっとという狭い路地を車で走行中、正面が歩行者がやってくるのが見えた。そして大抵そのタイミングで対向車もやってくる。そしてこの三者は全く同じ場所ですれ違うのである。まったくもって不思議である。もちろん、このうち誰かひとりでもその場に停まれば、すれ違いは楽にできる。しかし、人と人が見えない糸で引っ張り合っているかのごとく、停まることなく、ほかに誰もいない狭い路地で、この三者のみが緊張感を持ってすれ違うのである。

他にもある。

行列を見ると並びたくなる心理があるという。私にはそのような意識はないし、行列はできれば並びたくない。
ところが、コンビニに入るとなかなかそうもいかない。大抵はすでにほかに数名の客がおり、自分が店内にいる時にも、客は次々と入ってくるだろう。

このように来店するタイミングはバラバラであるにも関わらず、レジで会計をするタイミングはほぼ全員同じになるのである。故にコンビニのレジでは並ぶことが当たり前になっている。私としては、なぜこのタイミングが重なるのか疑問である。

この手の疑問は恐らく先人たちがあらゆる学問を通して、決着はついていると思う。人間の行動心理学やその土地における人口密度もかかわってくるだろう。あるいは交通ネットワーク(信号が切り替わるタイミングによる交通量調整)や、コンビニの経営側の徹底的なマーケティングリサーチによって、画一化された消費者行動を知らないうちに取っているだけかもしれない。

自分の頭で考え、行動しているだけなのに、実はすべて見えない他者によって思考や行動がコントロールされているのかもしれない。
あるいは物理学における万有引力の法則にのっとって、人も細胞レベルで引き付けあっているのかもしれない。

フィクションの世界でよくある、曲がり角でぶつかるという運命の出会いも、確率の高い偶然なのか、あるいは見えない黒幕による創作なのか、見えざる手によって、私たちは生活していくようである。

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